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独断と偏見の・・・ベスト音律はこれだ!

ベートーベン作曲 WoO.59 (イ短調)
「エリーゼのために」

ここでは、ききくらべのコーナーの「おすすめ調律法」について、その結論に至った経緯を残しておきたいと思います。
理論的な事よりもあくまで「主観的な」印象を重視していますので、書いている本人でさえその日の気分によってベスト音律は異なってきます。予告無く内容を書き換えることもありますのでご了承ください。
ちなみにMidi音源は外付けのSC-88VL (古っ!)で評価しています。



まず冒頭部。


● 平均律 冒頭、E-Dis-E-Dis-E の半音が、平均律ではどうも広すぎてへんな感じです。もし作曲のときに平均律を使っていたら、こんな出だしにはならなかったはずです。

大半の古典調律は、Eがやや低め、Disがやや高めになるので、つまりこのE-Disの半音は平均律よりも狭くなります。その効果を期待してこの音程からはじまっているに違いない。

● キルンベルガー第3 E-Disは平均律より 8セントほど狭くなりスムーズになってきます。一方、そのあとに出てくるH-Cの半音、これが広がってしまって違和感が出始めます。大半の古典調律はHがやや低め、Cはやや高めになる傾向があります。つまり、この両方の半音を気持ちよく演奏するためには、かなり平均律に近い調律法の中から選択せざるをえないということになります。

悪い組み合わせの例を次に挙げます。
● ラモー H-Cが広く、特にCの音が高めに調子っぱずれに聞こえてしまいますね。17セントも平均律より広いんです。これはちょっとありえない。ラモーはフランスの人ですから、ベートーベンとはだいぶ文化が違うだろうことは想像できる訳で、不思議ではないですね。


もっとも平均律寄りの古典調律の一つとして、まぁまぁなのが
● ヴァロッティ/ヤング E-Disは平均律より6セント狭く、 H-Cは10セント広くなります。気になりだすと気になるのですが。


そしてなんといっても調律上の鬼門が後半のこの部分。
メディアプレーヤーのスライダーを2/3ぐらいのところまでもっていってください。

不協和音をいったいどう響かせるべきなのか。初心者向けと思われているこの曲でさえ、下手な音律理論では既に太刀打ちできません。


● キルンベルガー第3 
● ヴェルクマイスター第1技法3番 
よく知られる調律法ですが、この部分の演奏に関してはどうも肝心の所で緊張感が欠ける感じでイマイチ。なんでぇ?こういう和声進行になったのかぁ?という必然性が感じられないんですね。

● ヴァロッティ/ヤング [MP3録音]
なんかびしっとキマるでしょう。不協和音の響きは微妙な音程の違いも意外と大きな差になって聞こえるんです。このフレーズ全体を通して良い緊張感が持続できますし、なんかこう心に迫ってくるものがあります。悩んで悩んでやっと最後にここにたどり着いた、という感じがするんですよ。これがイイ。

他の調律法もいろいろ聴きましたが、このレベルに達するものはありませんでした。


・・・というわけで、おすすめは ヴァロッティ/ヤング。これで決まり!
最近の電子ピアノにも搭載が進んでいる音律ですので、ぜひ試してみてください。

注記:
本当は、ヴァロッティとヤングは微妙に異なる別の音律です。しかし、Midi音源では1cent単位でしか音程を調整できないので、端数をまるめこむと一見同じになってしまうんです。が、不協和音の響きの話になるとこういう微妙な差も無視できなくなってきます。ここは課題として残る所です。


※参考文献(書籍名、URL一覧のみ)


解説: Shintaro Murakami murashin@murashin.sakura.ne.jp

Copyright(C), 1998-2006, Shintaro.Murakami

キーワード:

音楽 , クラシック , ピアノ , 調律 , ベートーベン , エリーゼのために , ヴァロッティ , ヤング