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MIDIによる調律法ききくらべ ・・・感想・・・


ここでは、管理人が聞き比べしてみた感想を記していきます。
ほとんどインターネットで適当に拾ってきた情報や、主観的な推測の寄せ集めであり、学術的な裏づけなどはありません。悪しからずご了承ください。


ゴセック 
Francois Joseph Gossec
(1734 〜 1829) ベルギー
ガボット (歌劇「ロジーヌ」より) 1786年
これはラモー(平島案)が本当にピッタリ。文句のつけようがない。「フランス交響楽の父」ともいわれる彼がラモーを知らないはずもなく、当然か。



ウェーバー
Carl Maria von Weber
(1786 〜 1826)ドイツ

舞踏への勧誘 
ロンドブリランテ 

問答無用。キルンベルガー第1で演奏してください。間違いない。



ショパン 
Fryderyk Franciszek Chopin
(1810 〜 1849) ポーランド

【エチュード op.10】

ラモーの音律(平島案)でも、キルンベルガー第1でもどちらでもいけます。しかしどちらかというと,ラモーの長所が生かされているように感じる。
Op.10はラモーの音律で作曲され、後でキルンベルガー第1でも演奏できるよう手直しされたのではないかと直感的に想像します。

第3番 ホ長調op.10-3 「別れの曲」
平均律だと中盤がトゲトゲしくなりすぎる曲。しかしラモーの音律だと違います。自然な流れのまま幻想的な世界へ引き込んでくれます。

第4番 嬰ハ短調op.10-4
第5番 変ト長調op.10-5 「黒鍵」

ラモーの音律の方が色彩感豊かで楽しい。何度でも聴きたい。こういう曲を作る気になった理由がよく解る気がする。

第12番 ハ短調op.10-12「革命」
平均律ではどうにもトゲトゲしすぎて、途中の長調と短調のバランスが悪く聞こえ、終わり方もなんだか中途半端な曲です。練習曲だから・・・と平均律擁護派は言い訳するのかもしれませんが、ラモーの音律だとかなり様子が変わります。トゲトゲしさがうまく丸まって、部分的な転調も自然に聞こえるようになります。何と言っても、最後の終わり方がびしっとキマるのです。作品としてのまとまりの良さでいうなら、ラモーの音律の方が間違いなく上です。


話がそれますが、Op.10はリストに献呈されたそうです。リストはショパンの軍隊ポロネーズを頻繁に演奏会で取り上げたという話が残っていますが、軍隊ポロネーズはラモーの音律か、またはもっと平均律寄りの曲で、キルンベルガー第1ではヴォルフのために演奏不可能な曲でもあります。
つまり、リストはキルンベルガー第1を使うことは無かったに違いない、ということもわかってきたりします。


【エチュード op.25】

エチュード集の楽譜では op.10とop.25をひっくるめて24曲としていて、実際ショパン自身も弟子のレッスンにOp.10とp.25を混ぜてレッスンしたりしていた訳ですが。。。 調律法に着目すると少々様子が異なります。ラモーの音律(平島案)でも、キルンベルガー第1でもどちらでもいけるのですが、こちらはキルンベルガー第1の長所を最大限に生かす曲が集められているように見えます。
キルンベルガー第1で作曲され、後でラモーの音律でも演奏できるよう手直しした、のではないかと想像。

第1番 変イ長調op.25-1 「エオリアン・ハープ」
第12番 ハ短調op.25-12 「大洋」
これだけ盛大に和音をかき鳴らしておいて、キルンベルガー第1の禁則にただの1箇所も抵触していないなんて、偶然では絶対にぜぇーったいにありえまっせん。きっぱり。


第5番 ホ短調op.25-5
この曲は途中でD-Aの5度が出てきます。平均律だと何と言うことはないですが、キルンベルガー第1では特別な和音・・・ヴォルフの5度、酷い響きの和音です。
普通なら「やっぱりダメじゃん」となりそうな所ですがいやいやまてまて、使い方に着目しましょう。この曲ではヴォルフのD-Aを不協和音とうまく絡めて違和感無く聞かせ、おちゃめな感じを演出するのに役立っているように聞こえます。この効果が偶然とはやっぱり思えない。この曲はD-Aのヴォルフがある調律法で演奏すべきなのです。


第9番 変ト長調op.25-9「蝶々」
ラモーでも楽しいけど、楽しさにキルンベルガー第1の純粋さが加わった方が魅力が増す。

第11番 イ短調op.25-11「木枯らし」
冒頭のテーマの後に続くコラールのような和声が、キルンベルガー第1だときれいにハモる、という所でピンとくるよね。



【ノクターン】

ノクターン第13番 op.48-1  
 
この曲には純正な和声が必要です。平均律では嫌な響きが耳に付いてしまい気持ちよく聴けない。名曲なのにイマイチ知名度が上がらない原因は平均律との相性の悪さにあるのではないか?

キルンベルガー第1:
かなり良いのだが、残念なことに中間部の長調の所で何箇所かヴォルフが出る。これは普通には許容できない。大きなアルペジオや後半の雰囲気はとても良い。

キルンベルガー第2:
中間部のヴォルフを多少ごまかすことが出来るが、代わりに他のところに悪影響が出てしまう。しかしそれにしても後半の壮大なスケール間はとても印象的だ。こういう解釈もアリではないか。良く響く広いホールで演奏したらさぞかし気分が良いことだろう。。

キルンベルガー第3:
ヴァロッティ:
音楽の流れから言って、びしっと決まってほしいところで中途半端な響きになってしまう。欲求不満。
どちらか選ぶならヴァロッティの方がBetter。

ラモー(平島案):
キルンベルガーのようなヴォルフは目立たない。クセがある音律だが、慣れればそれほど気にならない。哀愁漂う表現で雰囲気がある。和音は要所ごとにキマるし、微妙なうなりは心理描写として聞く人に訴えかける力を持っている。 キルンベルガー第1、第2のような果てしないスケール感は薄れ、もっと人間味のある表現になる。広くない部屋で弾くならこっちがいいかな。ツッコミ所としては、平島案と同じ調律をショパンが使うなんてありえないという所。ショパン向けに若干手直しすればもっとよくなるかもしれない。

結論:キルンベルガー第2でもラモーでも、それぞれ違った趣で楽しめる曲。
    ショパンも両方の音律で演奏したのではなかろうか。

サティ
Erik Alfred Leslie Satie
(1866 〜 1925)フランス

サティは押しも押されぬ平均律の作曲家と思われているがさて、どうでしょう。


グノシエンヌ第1番 

古典調律をかじった人なら、この曲が中全音律ぽい雰囲気を持っていることにピンとくるはず。
中全音律と言っても改良型のシュニットガーあたりかな。

シュニットガーの調律法:
ラモー(平島案):
おう、やっぱり、違和感なく聴ける。平均律の曲がたまたまこんなにぴったりおさまるなんてありえるんだろうか。しかし、凡庸な印象。すぐに忘れられてしまいそうだ。

平均律:
これは面白い。平均律で弾いてしまうとどうにもおかしな響きなんだけど、そのミスマッチこそが不気味な雰囲気と強力なインパクトの源泉になっていることがわかる。やっぱりこれは平均律の曲だ。


ジュ・トゥ・ヴ(お前が欲しい)
Je te veux

ラモー(平島案):
そんなに悪くもない。ダンス曲っぽい雰囲気が増す。けど、ちと能天気すぎるか。

平均律:
こっちの方が若々しい演奏に聞こえるね。陰陽がちゃんとあって、高感度高い。


ジムノペティ第1番

平均律:
この曲は平均律のうなりまで含めて曲の一部なんだろうなぁ。

ラモー(平島案):
フランスのクラシックはとりあえずラモーで聞いてみると何かしらの発見があるもんです。
意外と行ける・・・けど、爽やかさがなくなるな。


改良中全音律系との相性は、偶然なのか、意図的なのかわからない。が、サティの周囲ではまだまだ中全音律系の雰囲気が残る環境だったのかもしれない。音楽家は意外と保守的なものです。音律がまさに平均律に移行しつつある時代ならではの瓢箪からこま。
皮肉な言い方をするなら、平均律しかしらない音楽家には、こういう曲は作れまい。

キーワード:

音楽 , クラシック , ピアノ , 調律 , 平均律 , 純正調 , バッハ , モーツァルト , ショパン