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独断と偏見による古典音律解説

 

シュニットガー(Schnitger)の調律法

バロック中期〜後期

 

音律の概要:

 プレトリウスの中全音律にさらに改良を加え、より洗練されたタイプの調律法。
 ミーントーン(MeanTone)の良さをなるべくそのまま残しながら、アンバランスに聞えがちな響きに対して修正を加えています。

●調律考案者:Arp.Schnitger(アルプ・ シュニットガー、1648-1719)

●調律方法: 「F - C - G - D - A - E - H - Fis」をミーントーンの5度に取り、残りは純正な5度で決める。

●純正な音程: 5度が「Es - B - F」「Fis - Cis - Gis」。長3度が「F - A」「C - E」「G - H」「D - Fis」。

●出典:オルガンの歴史とその原理/平島達司/神戸松蔭女子学院(短期)大学学術研究会
 「明庵(めあんとねさんのページ)」(http://crafts.jp/~meantone/index_.html)より引用させて頂きました。 [魚拓]


サンプル曲(MP3録音):
J.S.バッハ作曲 BWV578フーガ ト短調「小フーガ」

スメタナ 『我が祖国』より第2曲『ヴルタヴァ』(モルダウ)ホ短調



特徴:

 シュニットガー(Schnitger)によって造られた大規模なオルガンは、当時を代表するオルガンとして、またオルガンの歴史の中でも大変重要な地位にあり、そのいくつかは修復を重ねながら現在も使用されていて、レコーディングも多数行われています。ただし、上に記した音律と全く同じ音律が施されたパイプオルガンは現在ではほぼ無いようです。代わりに、これとよく似た調律法のバリエーションが多数あります。それらの祖先にあたる調律法として、歴史的には重要な調律法と言えます。

 
 「シュニットガー(Schnitger)の調律法」として知られるこの調律法の特徴としては、

・アンバランスに聞えがちな音程に対してのみ修正を加え、

・あえてヴォルフを少し残し
・奇をてらわず完成度を高める事にこだわった

 というような調律法と言えるでしょう。「調性格」という面での使い勝手がそれまでの音律より改善されています。

 調律法としては少々保守的なタイプであり、たとえば大胆な不協和音が一部の演奏家(作曲家)で使用されるようになってきた時代であったにもかかわらず、この調律法ではそのような響きには配慮していないようです。

 しかしそれでも、この調律法と相性の良い曲を見つけることは容易で、18世紀から19世紀のドイツ系の広範な楽曲に対して試してみる価値が有ります。

 

実践のために:

 歴史的・年代的にはミーントーン(Meantone)で演奏されていたと考えられるものの、1/4コンマ中全音律ではどうも具合がわるい、というような場合にぜひ試してみる価値があります。

 調律法との相性が良い曲の場合には、現代の私達にも十分自然に聞えるので、一般のコンサートなどの場面でも利用価値は高いものです。というより、この調律をもちいて演奏しなさいというべきでしょうか。

 この調律法と相性の良い曲というのは、現在ではほとんど演奏されないような曲である場合も多いので、残念ながら結局のところ出番はそれほど多くないかもしれません。こういう曲は、これまで本来の調律法で演奏される機会を得なかったために低い評価に甘んじている可能性もあるわけで、それぞれの曲にふさわしい調律法での再評価が望まれるところです。

 

 注目されるのはこの調律法が、J.S.バッハのオルガン小曲集(BWV599−644)など、比較的小規模な類に分類されるバッハのオルガン曲と相性が良いということです。バッハは「平均律クラビ―ア曲集」で話題にされるような調律法ばかりを使っていたわけではなく、シュニットガーの調律法に代表されるような改良形の音律も、きっと使っていたのでしょう。

 

 ※参考文献(書籍名、URL一覧のみ)


解説: Shintaro Murakami murashin@murashin.sakura.ne.jp

Copyright(C), 1998-2009, Shintaro.Murakami

キーワード:

音楽 , クラシック , ピアノ , 調律 , 平均律 , 純正調 , バッハ , モーツァルト