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ききくらべガイド (2000年1月12日一部改訂)
ここでは、私の個人的な意見を交えながら、ききくらべのポイントについて少し解説してみたいと思います。
ご注意:はじめてこのページにいらした方は、最初に必ず「GS音源とMIDI再生ソフトのチェック」を行ってください。ここでOKの状態でない場合は、このページのデータはすべて平均律で演奏されてしまいます。
第10回 L.V.ベートーベン作曲 「エリーゼのために」の場合
今回も大変有名な曲です。 A-B-A-C-A という”小ロンド形式”の曲で、それぞれかなり異なった雰囲気のメロディーが組み合わせられています。私などは、「ピアノの初心者向けの曲」というイメージが強いのですが、この曲に適した調律というのも、簡単に見つけられるでしょうか。
No | 調律法 | 曲名 |
1 | 平均律 T00evn--.mid |
L.V.ベートーベン ( Ludwig van Beethoven) 作曲
エリーゼのために
MIDIデータ製作者 |
2 | ヴェルクマイスター の調律法 T02Wrk-C.mid (第1技法第3番 基本形) | |
3 | ||
4 | ミーントーン調律 (中全音律) T04mtn-c.mid 基本形 | |
5 | ピタゴラス音律 T02ptg-c.mid ハ調、イ短調向き | |
6 | 導音重視タイプの調律 T19org-c.mid ハ長調、イ短調向き |
「ヴェルクマイスター」や「キルンベルガー」については、平均律と聞き分けるのはけっこう難しいですね。少々気になる点も無くはないのですが、平均律と比べてどちらがどう、と明確に言うのは、なかなか難しいように感じます。
ミーントーン調律では、冒頭部の ミ-♭ミ-ミ-♭ミ-ミ の部分が、大変魅惑的に響きます。この調律では、♭ミは高めに、半音上のミの音は低めに調律され、♭ミ-ミ間がかなり狭い短二度になるという特徴があるので、こういう効果を生むのです。この部分のみを聴くと、 「ベートーベンはひょっとして、これを使ったのかも」 と思ってしまいます。また、アルペジオもよく協和します。 反面、少し気になる点としては、旋律の流れのあまりスムーズでない部分がしばしば出てきます。
ピタゴラス音律や導音重視タイプも、"A-B-A-C-A" の構成中の "A-B-A" までは比較的スムーズに流れます。(好みの問題はありますが。) しかし、"C"にくると途中にバランスの悪い響きが出てきてしまいます。
楽曲構成上の"C"の部分の楽譜を見てみると、短三度を積み重ねて作る和音(ディミニッシュコード)が使用されていること等を始めとして、不協和音を効果的に用いながら、旋律と絡み合った形で非常に複雑なコード進行をしていることがわかります。
「不協和音を効果的に用いている」曲においてどういう調律法がBESTか、ということは、かなり高レベルな問題であり、結論は出せないように思われます。さすがベートーベン、ですね・・・。
第9回 W.A.モーツアルト作曲 「きらきら星変奏曲」の場合
前回に引き続きモーツアルトの曲です。前回は、モーツアルトがミーントーン調律を使用した可能性について少し述べましたが、まるで鍵盤楽器でたのしく遊んでいるかのようなこの曲では、どのようにきこえるでしょうか。
No | 調律法 | 曲名 |
1 | 平均律 T00evn--.mid |
W.A.モーツアルト ( WOLFGANG AMADEUS MOZART ) 作曲
きらきら星変奏曲
MIDIデータ製作者 |
2 | ミーントーン調律 (中全音律) T04mtn-c.mid 基本形 | |
3 | ||
4 | ピタゴラス音律 T02ptg-c.mid ハ調、イ短調向き | |
5 | 導音重視タイプの調律 T19org-c.mid ハ長調、イ短調向き |
ミーントーン調律に最初は、少々違和感を感じるかもしれません。でもその、一見調子はずれのような、うまく流れているような微妙なバランスは、なかなかユーモラスで聞く人を楽しませます。また、この曲では長二度をぶつける音を比較的多用していますが、これはミーントーンのよく協和する長三度と、とても良い対比を生むという効果もあるようです。
一方、ピタゴラス音律での演奏は、より上品でやさしさのある感じにきこえ、これはこれで捨てがたいものがあります。ただ、全体として今一つ面白みに欠け、たいくつしてしまうような気もします。また、途中のハ短調になる部分は、ピタゴラスではどうも具合がよくないようです。
この、ハ短調になるところをどういう音程で演奏すべきかという事は悩むところですが、ミーントーン調律においては、この部分を「悲しみ」というよりもむしろ「滑稽さ」を持って聴かせてしまいます。 モーツアルトの作品には、たとえば「音楽の冗談(K.522)」のように、音楽でユーモアや冗談を表現したものもあります。このあたりのことと考え合わせると、この効果は偶然ではなく、やはりミーントーン調律を使用していて、この効果をねらっていたのではないかと思えてなりません。 あなたはどのように感じますか?
第8回 W.A.モーツアルト作曲
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の場合
今回は大胆不敵にも天才作曲家・モーツアルトの代表作ともいえるこの曲で調律法のききくらべをしてみましょう。
モーツアルトが使用していた鍵盤楽器が、どのような調律が施された物であったのかは、大変興味深い所です。一説によればミーントーンが最も有力ともいわれ、これにまつわる話も残っているようです。それでは、これらの調律において、この名曲はどのようにきこえるでしょうか。
No | 調律法 | 曲名 |
1 | 平均律 T00evn--.mid |
W.A.モーツアルト
作曲 ( WOLFGANG AMADEUS MOZART ) (セレナーデ 第13番 ト長調 K.525)
アイネ・クライネ・
MIDIデータ作成者
ホームページ:まこやん's
page 推奨音源:GS (SC-88VL) |
2 | ミーントーン調律 (中全音律) T04mtn-c.mid 基本形 | |
3 | ||
4 | ピタゴラス音律 T02ptg-g.mid ト調、ホ短調向き | |
5 | 導音重視タイプの調律 T19org-g.mid ト長調、ホ短調向き |
この曲に登場してくる主だった旋律についていえば、ミーントーン調律では少々不自然に聞こえ、ピタゴラス音律の方がそれらしく聞こえます。実際の弦楽アンサンブルのCDなどを聞いてみると、これもどちらかといえばピタゴラス音律的であるように私には聞こえます。
しかし、二楽章の転調部分や四楽章の中の臨時記号が多く出てくる所になると、ミーントーン調律は、なんとも興味深い響きを聴かせはじめます。・・・これはバッハの作品と比較すると全く対照的です。
バッハの曲の多くは、臨時記号が多く出てくる部分においても、なおピタゴラス音律でほとんど対応可能でした。バッハの曲をミーントーンで演奏しようとすると、臨時記号が多く出てくる部分では、しばしばかなりまずい結果になってしまいます。
それにくらべてこの曲の場合は、もしかすると臨時記号の多い部分を、ミーントーン調律で具合悪く聞こえる音の組み合わせを避けるように曲作りをしたのではないかと思われるほど、この調律でうまく聴かせることができます。それらの部分を聴くと、モーツアルトが中全音律系の調律を使用していたという話もうなずけます。
第7回 F.F.ショパン作曲 「幻想即興曲」の場合(part2)
前回は、この曲が転調を含むということで、少し守りに入って無難な調律法についてのみ試してみました。
今回は、あえておかしな響きが生じる事を恐れず、よりくせの強い調律で、この曲を演奏するとどうなるかを見てみたいと思います。
No, |
調律法 |
曲名 |
1 | 中全音律 T04mtn-e.mid Eシフト |
ショパン
「幻想即興曲」
|
2 | ピタゴラス音律 T02ptg-e.mid ホ長調、嬰ハ短調向き | |
3 | 導音重視タイプの調律 T19org-e.mid ホ長調、嬰ハ短調向き | |
4 | 導音重視タイプの調律その2 (スペシャルバージョン) T21org-e.mid ホ長調、嬰ハ短調向き |
んー・・・いざとなるとコメントを加えるべきか悩んでしまいます。
中全音律はアルペジオがよくハモりますが旋律・・・・は、ほとんどお約束。
この中ではNo2のピタゴラス音律が一番ふつうにきこえるといってよいでしょうか。
個人的にはNo4のスペシャルバージョンはかなり気に入ってます。それは私の性格が曲がっているから?
第6回 F.F.ショパン作曲 「幻想即興曲」の場合 (part1)
ここまで連続して、バッハの作品についてとりあげてきましたが、ちょっと雰囲気を変えてショパンの作品の場合の例を紹介いたします。(歴史的な順に沿って解説できればベストとは思うのですがご容赦ください。)
ここで取り上げる「幻想即興曲」は、これまで解説してきたバッハの作品と大きく異なる点があります。それはすなわち 「 曲の途中に転調がある。 」 ということです。バッハの作品にも実質的な転調を臨時記号で表記しているケースが多くありますが、明示的な転調とは区別して考えるべきでしょう。
まず今回は、転調による矛盾が生じにくいと思われる調律法について聞き比べてみましょう。
No, |
調律法 |
曲名 |
1 | 平均律 T00evn--.mid |
ショパン
「幻想即興曲」
|
2 | キルンベルガーの調律法 T03Krn-C.mid (第3 基本形) | |
3 | ヴェルクマイスターの調律法 T02Wrk-C.mid (第1技法第3番 基本形) |
これらはいずれも、全ての調が使えるように工夫された調律なので、平均律と聞き分けるのは難しいかもしれません。しいて言えば、キルンベルガーやヴェルクマイスターでは、中間部の旋律がより美しく、やさしさを持った旋律に聞こえてくるような気がします。また短調の部分はより感情表現の起伏の激しいものに聞こえてきます。
・・・・もし、ここであなたが「キルンベルガーの調律法」と「ヴェルクマイスターの調律法」を聞き分ける事ができるとすると、あなたは大変に音感がすぐれています。ちなみに私にはこの2つを聞き分ける事はほとんどできません。
さて、ここで私は1つの疑問を持ちます。なぜ、ショパンは、すべての調を使用可能なこれらの調律法がその時代に存在していたにもかかわらず、「嬰ハ短調」「変ニ長調」という面倒な調を使用したのでしょうか?わずか半音下げるだけで、「ハ短調」「ハ長調」という、わかりやすい調になるのに、です。
ここで、不等分平均律において、半音移調すると、雰囲気がどう変わるか聞き比べてみましょう。曲データの方を半音移調するのは面倒なので、すでにライブラリに準備されている、調律の方の相対的な音程関係をを半音上にシフトしたものを、使用してみます。
No, | 調律法 | 曲名 |
4 | キルンベルガーの調律法 T03KrnuC.mid (第3 C#シフト) |
ショパン作曲
「幻想即興曲」
MIDIデータ作成者 |
5 | ヴェルクマイスターの調律法 T02WrkuC.mid (第1技法第3番 C#シフト) |
ある程度は問題ありませんが、どうも調子っぱずれに聞こえてくる音程がいくつか生じてしまいます。中間部の旋律も、伴奏のアルペジオはよくハモるものの、肝心の旋律はどうも繊細さに欠けたものになってしまうように感じます。基本形の調律とくらべると、半音ずらすだけで、かなりはっきりした差が出てくることがわかります。これらの調律は、すべての調を使用可能といっても、曲の雰囲気は、かなり違ってきてしまうようです。
ここでARATA氏の「MIDIで古典調律を」 から、ヴェルクマイスターの調律法の基本形におけるそれぞれの長音階の性質について紹介いたしますと、
もし、ショパンがキルンベルガーかもしくはヴェルクマイスターの調律法を、基本形に近い形で使用していて、この差を認識していたとするならば、それはつまり中全音律に近い響きの調よりも、ピタゴラス音律的な響きがする嬰ハ短調・変ニ長調の方をショパンは選んだ、ということになります。そしてこれは実際の演奏の上でも、より自然な形に聞こえてくるようです。
・・・・次回はさらにくせのある調律について、行ってみたいと思います。お楽しみに。
第5回 J.S.バッハ作曲 「主よ、人の望みの喜びよ」の場合
これもかなり有名な曲ですね。弦楽器を中心とした合奏と、合唱という構成です。美しい旋律を奏でる弦楽器と、神秘的な響きのコラールの組み合わせなのですが、ここではまた、調律についてのいつもの「長三度をどう取るか」ということが気になります。すなわち旋律的な動きの弦楽器はこれを高めに取った方がよさそうですし、重厚な和声によるコラールの中の長三度は、一般的に低めに取る事になっています。
この矛盾を自然な形で解決できる方法はあるのでしょうか?
No | 調律法 | 曲名 |
1 | 平均律 T00evn--.mid |
BWV147
データ作成者: |
2 | ミーントーン調律(中全音律) T04mtn-g.mid Gシフトタイプ (長三度低め) | |
3 | ||
4 | ピタゴラス音律 T02ptg-c.mid ハ調、イ短調向き (長三度高め) | |
5 | 導音重視タイプの調律 T19org-g.mid ト長調、ホ短調向き (長三度高め) |
ミーントーンの場合は、やはり弦楽器の旋律がかなり不自然になるように感じます。
それに対して、長3度を高めにとるピタゴラス音律の方は、コラール内の和声の響きの問題はあまり表面には出てきません。むしろ、コラールの旋律的な動きがより自然な流れになるという面が以外と良いようにも感じます。この曲の中間部では、半ば強引とも思える形で部分的に短調になりますが、短調から長調に戻ってくる所の効果もなかなかのものです。
導音重視タイプの調律は、和声の響きがちょっと気持ち悪い所がありますね。もともと和声の事をまったく意識しておらず、旋律をきれいに聴かせる事しか考えてないのですから無理もありません。(むしろ和声の事を意識してなくてここまでこれる方が意外です。)この調律は私のオリジナルなのですが、これの詳細については改めて掲載したいと思います。
第4回 J.Sバッハ作曲 ブランデンブルク協奏曲第3番1楽章の場合
前回、前々回は、2声による曲ということで、和音よりむしろ旋律が中心となる曲を見てきました。今回は同じバッハの曲でも、曲の中で和音とリズムが重要な役割を占めている曲について見てみましょう。ARATAさん制作の大変すばらしいMIDIデータで、お楽しみください。
ブランデンブルク協奏曲の各曲は、基本的に弦楽器を中心に構成された曲ですので、調律法について検討するというのは、一見無意味のようにも思われます。弦楽器を演奏する人たちは、その曲の流れに応じて自在に最適な音程を得る事が可能なので、「調律法」というルールに縛られないからです。
ただし、バッハが作曲を行った際には何らかの鍵盤楽器が使用されたはずで、その鍵盤楽器の調律はきっと彼の創造力に影響を与えていたにちがいありません。そういう意味では、この曲の調律について考える意味もあるのではないかと思います。
※なお、このMIDIデータはバロック音楽の演奏の習慣をまねて全体を半音低くしています。したがって調律も半音ずらした形の物を表に挙げています。
No | 調律法 | 曲名 |
1 | 平均律 T00evn--.mid |
ブランデンブルク協奏曲
二、三楽章はメインページにあります。
homepage: |
2 | ミーントーン調律(中全音律) T04mtnuf.mid F#シフトタイプ | |
3 | ||
4 | ピタゴラス音律 T02ptguf.mid 変ト長調、変ホ短調向き | |
5 | 導音重視タイプの調律 T19orguf.mid 変ト長調、変ホ短調向き |
この曲でのピタゴラス音律は、ほとんどの部分で十分に良く適応して聴かせます。ただし、一部では調子ハズレにきこえてしまう部分もあるようです。もっとも、この曲は鍵盤楽器の曲ではなく、弦楽器の曲ですから実際には自由に調整できるのですが。
平均律やヴェルクマイスターは無難に聴かせますが、音楽としての面白みも減ってしまっているような気もします。難しい所ですね。
・・・・ここでは結論を急がず、調律の問題はこのように単純ではないようだ、という所までで、一区切りとしたいと思います・・・・。
第3回 J.S.バッハ作曲 2声のインベンション第13番の場合
前回に引き続き、バッハのインベンションをとりあげます。この13番は短調の曲ですが、大変美しい響きをもつ曲として、よく知られています。
No | 調律法 | 曲名 |
1 | 平均律 T00evn--.mid |
|
2 | ミーントーン調律(中全音律) T04mtn-c.mid 基本形 | |
3 | ||
4 | ピタゴラス音律 T02ptg-g.mid ト長調、ホ短調向き | |
5 | 導音重視タイプの調律 T19org-c.mid ハ長調、イ短調向き |
No,2のミーントーン調律をこの曲に適用するのはちょっと問題があるようですね。ミーントーンは一定の調における協和音がうまく響くよう考慮された調律なので、臨時記号が多すぎると対応できなくなってきます。
No,4のピタゴラス音律は、今回もまあまあ適合できているようです。分散和音的な旋律の中では、平均律との差が出にくい面もありますが、フレーズの切れ目などで微妙にニュアンスが異なっていることに注意して聴いてみてください。
インベンション1番と13番のピタゴラス音律は、「ハ長調・イ短調向き」ではない物を表に挙げました。これは、臨時記号が多いという、曲の特徴から、より違和感が少なく聞こえるものを選んでみたわけです。従来このようなことは実際の演奏の場面では行われず、平均律にて演奏されてきた訳ですが、それはきっと音楽的な要求というよりは物理的に困難だった為でしょう。もし、クリック1つでいろいろな調律に切り替える事ができたなら、バッハは平均律を選択しなかったかもしれませんね。
第2回 J.S.バッハ作曲 2声のインベンション第1番の場合
ピアノの練習曲として、よく知られている曲ですね。
この曲集は、もともと「クラビコード(clavichord)」という楽器のために書かれた曲です。他に「平均律クラビーア曲集」として知られている曲集も作曲されており、したがってインベンションも平均律で演奏すべき、とされる場合が多いようです。
しかし、ここではあえてこれらの事を無視し、いろいろと聞き比べてみましょう。
No | 調律法 | 曲名 |
1 | 平均律 T00evn--.mid |
|
2 | ミーントーン調律(中全音律) T04mtn-c.mid 基本形 | |
3 | ||
4 | ピタゴラス音律 T02ptg-f.mid ヘ長調、ニ短調向き | |
5 | 導音重視タイプの調律 T19org-c.mid ハ長調、イ短調向き |
No4のピタゴラス音律が意外と自然な旋律を奏でると思いませんか?。
私などは、ピタゴラス音律での演奏を何度か聴いた後で平均律をきくと、逆に「平均律ってこんなにアンバランスな音階だったっけ?」という感じがして耳を疑ってしまいます。
バッハは、ピタゴラス音律では作曲・演奏しなかったと一般的には考えられていますが、しかし、その響きはピタゴラス音律との関係を否定するものでは無いようです。
No3のヴェルクマイスター調律法は、「平均律クラビーア曲集」の「平均律」という言葉が実質的に指し示していた調律法に、比較的近い物ではないか、と考えられています。(現在の完全な平均律は、当時は存在しなかった。) 同じ調律で全ての調を演奏できるように工夫されていますが、演奏される曲の調によってピタゴラス音律に近い響きになる場合とならない場合があります。ここではピタゴラスに近い響きとなるよう、調律の方をシフトしたものを選んでみました。
※次の本には、バッハ自身が行っていたと考えられる調律について、詳細な説明があります。
参考文献: 「チェンバロの調律 −バッハの響きを再現する- 」
ヘルベルト・アントン・ケルナー著、郡司すみ訳
出版:東京音楽社
まず、バロック音楽としてよく知られている、ヴィヴァルディの「春」で、調律を聴き比べてみましょう。 どれが一番 「春」 らしい演奏にきこえるでしょうか?
No | 「長三度」 の取り方 |
調律法 | 曲名 |
1 | 普通 | 平均律 | 和声の創意と試み ヴァイオリン協奏曲 「春」 第1楽章 Allegro (RV269、ホ長調) Antonio.Vivaldi作曲
MIDIデータ制作: |
2 | 低め (純正調に近い) |
中全音律 (ミーントーン) (ホ長調用に、Eシフト) | |
3 | 高め | ピタゴラス音律 (ホ長調用にシフト) | |
4 | かなり高め | 導音重視タイプの調律 (ホ長調用にシフト) |
「長三度」の取り方を、「低め」から「かなり高め」まで、4とうり聴いていただきました。
どれを一番「春」らしい演奏だと感じましたか?
まず、ここでのポイントは、長三度の音程をどう取るかということが、音楽をどう表現するかという時の選択肢として重要なポイントになるということです。これらは作曲家や演奏家の自由な意思にまかされるべきものだと思います。時には長三度をかなり高めに取るという選択肢もありなのです。
MIDIデータの無断転載を禁じます。(調律データを除く)
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e-mail: murashin@murashin.sakura.ne.jp
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